矯正治療の豆知識

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スロット

いきなり専門用語で失礼します。しかし、詳しく調べておられる方もいらっしゃるかと思い、挙げてみました。『スロット』。私はパチンコは致しません。わざわざお金を払って喧しいところ、タバコ臭いところには行きません。歯列矯正での『スロット』とは永久歯につけるマルチブラケット装置(ブレースともいいます)に彫られた”溝”のことをいいます。(下図を参照)

スロットとワイヤー

*マルチブラケット装置

 

スロット

*スロット(マルチブラケットを真横からみたところ)

 

この溝には、幅の大きさの規格に種類があり、全世界の矯正は、0.018インチと0.022インチの2種類でほぼ網羅されています。ちょうど電車の線路幅に広軌と狭軌の2種類があるのと似ています。JR在来線は狭軌、新幹線や関西私鉄の多くが広軌を採用しています。昔、私が子どもで鉄道オタクだった頃に、『JR(そのころは国鉄)は全国じゅうに線路を敷かなくてはいけないから、線路幅の狭い狭軌の方が土地が少なくて済む』というまことしやかな理由を先輩から聞かされて納得していたのを思い出しますが、走る列車の大きさが同じなら、買収する土地の広さは変わりませんよね!?

広軌狭軌

*右がJR特急、左が近鉄特急  『Google より抜粋』

 

”脱線”はこのぐらいにして、、マルチブラケットの溝幅の違いは、大きく2つの視点からどちらに優位性があるか、医院はどちらを採用すべきか論じられます。まずはそのブラケットに通す矯正用ワイヤーとの摩擦の点で密接な関係があります。同じサイズのワイヤーを用いる場合、より幅の広い溝に通す方が余裕がある(スカスカである=”遊び”という)から摩擦抵抗は小さくなります。つまり太いスロットである0.022インチのブラケットの方が有利です。摩擦抵抗が少ないとブラケットがスムーズに滑り動くため、治療初期は早く進むといえます。治療が終わるにはキチッと歯がそろっていなくてはなりませんから、ワイヤーとスロットに遊びがない状態にする必要があります。そうすると一般的には、広いスロット幅を採用する方が太いワイヤーに上げるための段階が増えて、治療後半の期間は長引きそうにも思えます。

もう1点、溝幅の広いスロットに用いる太いワイヤーは剛性(硬さやねじれにくさ)が上がりますから、よりたわみのない歯列に持っていきやすく、歯列をがっちりホールドしてくれる優位性があります。同時に剛性の高いワイヤーはより大きな力を発揮しますから、これが患者さんにとっては治療の痛みが増加したり、力の大きさが歯根吸収(別途記述しますね)を引き起こす確率を上げる、と論じるドクターもいます。ですが、当院で治療を受けられている患者さんが皆痛いのを我慢しておられるかというと一概にそうとも言えませんし、むしろ0.018(狭いスロット)を採用していた大学病院勤務時代の頃の私が担当した患者さんから、よく『痛いですねぇ』と言われていたことを思うと、技術的な面(治療経験)での違いの方がより大きいのではないかと思われます。歯根吸収についても、0.022(広いスロット)の方が吸収するという研究結果はありません(あれば自然淘汰されるはずです)。

スロットとトルク

*断面が四角い『スロット』に断面が四角いワイヤーを装着すると、3次 元的捻じり力(トルク)がかかる。

 

ただ、この時期この話題をしましたのは、進学、転勤・転居等で遠方に引っ越しされる患者さんには問題となることがあります。転居先での受け入れ先医院がどちらのスロットサイズの装置を採用されているか、もし違うサイズのスロットなら、このまま続けてもらえるかどうか、医院に合わせてすべて装置を入れ替える必要があるか、予め伺って頂く必要があります。以降の治療費用が変わってくるはずです。

 

 

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