矯正治療の豆知識

矯正治療の豆知識

矯正の抜歯・非抜歯論争

ネット情報社会の勢いはすさまじい。勢いというのはスピードと均質化。あっという間に波紋のごとく一つのすう勢が隅々にまで行き渡る。

矯正治療の父とも呼ばれるE.H.アングル氏(1855~1930)が開発したマルチブラケット装置は、誕生から90年以上経た今も歯列矯正治療で使用される装置のなかで最善で確立された装置である。

E.H.Angle1855-1930

私が大学医局に居た約20年前は、このマルチブラケット装置を用いた抜歯矯正(永久歯をいくつか間引きしての治療)のイロハを先輩から学びつつ、”非抜歯矯正(歯を抜かない治療)”が席巻しはじめた時期でありました。センセーショナルな内容がワンフレーズでピタリ収まった時はとても受け入れられやすく、それまでの常識も覆るような様相となり、後から追いかける立場の者は乗り遅れまいと、さらなる勢いだけで喧伝し検証もしない。そのうち流行りは廃れ、振子は元の位置に戻ることになるのだが、歴史が繰り返すのは矯正界でもご多分に洩れず、将来また論争の種になるものと思われる。

生みの親であるアングル氏自身もそれまでの抜歯主義から、自身が開発したマルチブラケット装置の可能性を過大評価しすぎて非抜歯主義に翻った経緯がある。昔の学派というのは現在では想像もできないほどの権威があったため、弟子が反対意見など口にする者は皆無だったという。

しかし、われわれ矯正医サイドの問題であったこの抜歯・非抜歯論争は20年前はジワリと口コミで広がるのみで、それを専門書等で調べる外の人間(つまり一部の患者さんやその家族)はマニアックやオタクといった言葉で括られてしまうきらいがあった。だって、今では小学生も持っている携帯電話は、当時、一部の者のみが持てるセレブの象徴だったのだから。

ところが今はどうか。ネット環境の普及により、噂や口コミは”都市伝説”と揶揄され、自分自身で多くの見解を知るために、グーグル検索、ホームページ等に始まり、医師にセカンドオピニオンを聞くことまでが当たり前になってきた。我々もこうして情報提供のためにブログを用意している。日本人をはじめアジア民族はモンゴロイドと言って、欧米系のコーカソイドと区別されるが、その目鼻立ちの”深さ”の違いに象徴されるように骨格的な違いは枚挙にいとまがない。私がヨーロッパ旅行に出かけた時には、オランダ人の腰の高さが自分の目線上にあるの気づいたほどだ。モンゴロイド系のあごの骨の奥行きの短さにも拘わらず永久歯の数は同じなのだから、到底同じ土俵で治療方針を議論しようがない。また、歯周病(以前は歯槽膿漏という表現だった)に対する病因論から治療まで研究と臨床が積み重ねられると、矯正治療も抜歯・非抜歯の方法論より、結果の安定性(後戻りがないか)や審美性(口元との調和がとれているか、歯ぐきが下がっていないか)がより重要になってきている。

さて、この抜歯・非抜歯問題、矯正医のみならずこれから矯正治療を受けられる患者さんや親御さんにとってとても興味深い話題であろうとこのコラムで取り上げたが、浅学菲才な私が意見を述べるお題としては、かなり難しすぎました。なまじコピペで知ったかを装ってもグーグルロボットは見逃してくれませんので、ご興味のある方は続き以下のURLを参考にされて下さい。先人の残した偉大な言葉で締めくくります。

『慎重な検討の結果によれば、抜歯もまたやむを得ない』 C.S.Case

参考)http://www.nichikyosen.com/extnonext.html

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